熱意と執着と努力で信頼を克ち取れ
山内が良く若い人によく語ったことを紹介しておこう。それは、「絶えずひとつ上の立場で考えなさい」ということである。「係長であれば係長としての考え方や判断ではなくて、自分は課長であると思い『もし課長だったらどうするのか』、というように常にひとつ上の立場で考え、判断し、行動するようにしなさい。これが日ごろの上長の判断を理解し、相手の立場を考えた広い視野をもつことにもなり、ひいては自分の能力を高めるひとつの方法にもなる」ということだ。
歴史上の人間で大成した偉人伝の伝記を読んでも、それらの人々に共通するところは、例外なく自己の仕事に対する異常なまでの熱意と執着である・・・そこから周囲の信頼を克ちとっている」と健二は語る。平凡な人間が世に認められるためには、異常なまでの努力を払う他にはないという教えだ。
また、山内の一流に接することの大切さを残した言葉もある。それは「一流といわれる人にはそれなりの雰囲気もあり、学ぶところが多い。また、同時にそんな体験を重ねることにより、自分自身にも一流の雰囲気が備わるものだ」。筆者も様々な社長や講師と出会うが一流人はどこか違う。若いうちに一流人の謦咳に接することを勧めたい。
【プロフィール】
山内 健二(やまのうち・けんじ)1899年生まれ。
カコナール、マキロンなど大衆薬でヒットさせて山之内製薬の名をあげた。二〇〇五年藤沢薬品工業と合併しアステラス製薬となる。