人を幸せにする人が
幸せになる


筆者は三十代の頃、オムロンのコンサルタントとして京都の草津工場に通っていた。工場の入口に「人を幸せにする人が幸せになる」の文字が大きな石に刻まれていたことを思い出す。
そして当時の社員達は近くの堤防に桜の木を植え、工場のまわりの掃除をしていた。また四月になると通い慣れない小学一年生を交通事故から守るため工場の近くの横断歩道に黄色の旗を持って立っていた。
このように社員一人ひとりが心からの奉仕活動をする社風の背後には、創業者が残した企業理念や社会にかかわる時の“こころ”があるからだ。
「幸せは直接つかめない。人を幸せにすることの反応とし自分が幸せを感ずるものである。周囲がすべて幸せになっていけば、自分もいつの間にか幸せになっていく。これは商売でいう『奉仕優先』『消費者優先』の考え方だ。自分だけが幸せになりたいと思い、人を押しのけてでも自分の利益のみを追う、自己優先の考えは間違いである。
社会、お得意、消費者優先である。これなくして企業の繁栄もないし、企業の繁栄なくしてお互いの幸せもあり得ない」と語り、立石は、「人を幸せにする人が最も幸せになる」を常に強調していた。


【プロフィール】
立石 一真(たていし・かずま)1900年生まれ。
オートメーションの設備に思いをよせ、駅の自動改札や自動販売のシステムづくりをリードするなど『企業の公益性』を古くから訴えた創業者。