働くこと自体が、人の親切、社会への親切へとつながらなければ本当に良く働いたということにはならない


日本で人気の上位のホテルに椿山荘がある。筆者は、藤田観光には「組織活性化」のコンサルタントでかかわったが、この社に今でも創業の心が息づいている。
藤田観光を起した小川は「大いに働いた人こそ、大いに楽しむべきであり、観光事業はこの働いた人々に感謝をむねとして、サービスせねばならない」として、箱根小涌園をつくった男である。
「働いたならば楽しく遊ばなければならない。楽しく遊ぶためには、一人一人が持つといっても大変じゃないか、共同の庭をつくろうじゃないか。」と考え椿山荘を作った。
小川は、「大いに働いた人を楽しませるものは何よりも一人一人の社員の心にある親切と真心です」と指導した。
「観光事業はお客様に喜んでもらう商売です。どうすれば喜んでもらえるかというと、自然環境や設備も大切ですが実際は周りの温かい心、ことに従業員の真心が全部です」と言う。
小川語録には喜びを語ったものが多い。「人から喜ばれる。同僚から喜ばれる。なんとなくあの人の顔を見ていれば楽しいように思えてくる。そんな人になってください」
「働くこと自体が人の親切、社会への親切へとつながらなければ本当によく働いたということにはならない」などである。


【プロフィール】
小川 栄一(おがわ・えいいち)1899年生まれ。
温泉は出ないといわれた小涌谷に箱根小涌園をつくり、また都内にはやすらぎの池椿山荘をつくった日本の観光事業のリーダー的存在。