初めから儲けるつもりでのぞむのではなくて、みなさんのお役に立とうというつもりでやる。
それがみなさんにも報い、また結果においてわれわれの儲けにもつながる


 森は社員に向けての講話で以下のように述べている。
 「企業とは儲けがなければ自らも成り立たないし、儲けることによって発展も成長もするわけだから、それを無視することはできない。そうすると往々にして、儲けることが主になって本当の社会的なサービスという機能を忘れて、儲けるということだけに走るということにもなりかねない」
 つまり、まず儲けるよりも、こちらからサービスしてあげることによって、社会の必要に応じて需要を効果的に満たしていく、ということだ。
 とかくビル屋、不動産屋というと拝金主義でのカネカネと儲け中心に事業活動をする中にあって、町づくりやその地域への貢献という面を早くから考え、その方向で多くの実績を作ってきた森である。またそうした考えがARK Hills( アーク森ビル)のような先端装備を施した、業務・住居・文化機能と緑と広場を持つ、複合都市をつくりあげることになる。
 森は大学の元商学部長であっただけあり、先哲企業家の理念や教えを自らのものとし学び身につけたという。特に製糸王と言われた片倉工業の兼太郎( 三〇頁)の影響を受けたと言われている。 


【プロフィール】
森 泰吉郎(もり・たいきちろう)1904年生まれ。
55歳の時、横浜市立大学商学部長から転じて、虎ノ門、新橋、赤坂を中心にオフィスビルを建築、運営した。六本木に「ARK HILLS」(アーク森ビル)を完成させる基盤をつくった。