売り上げは、
お客さまからの支持率だ
利益は仕事の段取りや
効率を示すモノサシである
伊藤はたいへんな勉強家であったようだ。重要な話になると自分の口を閉ざし、徹底して人の話を聞く。情報収集に徹した人だったようだ。この姿勢で同業他社の経営者の意見のみならず、欧米のトップの話もよく傾聴した。
伊藤は人の話を聞くだけで自分のことは話さないので「伊藤さんは人のことばかり吸収して、自分のこととなると口をつぐんでしまう……」と言うまわりの声も多かったが、伊藤は「私は特にお話するようなことがございませんので…」と語ったという。
伊藤は昭和四十九年、上大岡店((横浜市)を開店したが、店舗内のカラー・コントロールはすべてアメリカの業者にやらせ、設備、器具はアメリカの店を視察してきた内容をフルに活かし、シアーズ・ローバックやJ・C・ペニーなどで使っているものを取り入れたという。
ご承知のようイトーヨーカ堂は、駅前の一等地には出店しないやり方をとった。意識的に二流の地に、同業他社よりやや大きめな店舗を構えた。
「限られた資本を最大限に活用するためには、一等地より二等地を選んだ方が投資効率がいいんですよね」と伊藤は語る。一歩控えめではあるが常に気鋭な取り組みが見事に成功をリードしたというわけだ。
【プロフィール】
伊藤 雅俊(いとう・まさとし)1924年生まれ。
ヨーカ堂の前身は母と兄が開業した「羊華堂洋品店」である。この店を兄の急死により引き継ぎ、持ち前の知恵で流通革命をリードして今日の基盤を築く。