儲ける経営より
「儲かる経営」


 「事業というものは世間の利益と一致したところに繁栄するものであって、〝儲けてやろう〟という気持ちでやる事業には自ら限界があるものだ。ところが〝世のためにやるのだ〟という精神で道を即してやれば、〝自然に儲かる〟ものであって、その方がむしろ利益は無限である」
 「利幅を一割五分に下げても三倍売れば、利益はその五割増しになるじゃないか。儲けるより儲かる商売をやるべきだと私は思う。」
 リコーや銀座の三愛をはじめ二百数十社の会社を創業し、いばらの道と虹の道を交互に歩み続けた市村の経験の中からにじみ出てきた言葉である。
 「経営者というものは決して一攫千金を夢見てはいけない。僕も昔、リコーの増資の時一部公募を行い、何億という金をタダ同然に得たことがあるが、これが企業の中に金に対する安易な考えをどれほど浸透して毒したかしれない。経営というものは一枚のパンティーを売ってわずかに儲かり利益が累積して成り立っていくものである。起業家は地道な努力を決してわすれてはいけない」
 高度経済成長期のスター経営者のこの語録に思わず拍手喝采してしまう。

【プロフィール】
市村 清(いちむら・きよし)1900年生まれ。
リコー三愛グループはじめ会社を二百数十社を起業した。高度成長期のスター経営者、別名「経営の神様」と言われ、東急の五島昇、ソニーの盛田昭夫はじめ、「市村学校」に通って学んだ上場企業の経営者は数多い。