みんながだめだと言うから、成功するみんなが、いいとか、やりなさいと言ったら成功はおぼつかない
それだけ競争が多いからだ


 藤田は皆の反対を押し切ってマクドナルドに取り組み、次のように語った。
 「毎日百万人近くの赤ん坊が生まれてくる。彼らは醤油も味噌も知らんのですよ。あの子どもたちは小さなころからポテトをかじり、ハンバーガーを食っている。あの子どもたちはもうスシとかウドンとかに帰らないですよね。だからパイは同じだけど、人口の構成比率はハンバーガー人口がどんどん増えていくわけです。だから前途洋々だと私は言っているんです」
 当時マクドナルドのポリシーは「Q・S・C+V」であるとしていた。Qは品質、Sはサービス、Cは清潔、Vは価値である。
 マクドナルドの経営は最初からすべて科学的、統計的な実数値によって行われた。単純化、標準化、専門化を徹底してやったからこそ〝ハンバーガー店〟が大企業になったのである。
 例えばキッチン内通路幅0・六~一・二メートル、時間当たり売上高十五万円の基準の厨房機器システム、カウンターの高さ九二センチ、パンの厚さ一七ミリなど当時からまるで生産工場のような計算し尽くされたシステムである。これならアルバイト中心で大企業となっていったマックの秘密が理解できる。


【プロフィール】
藤田 田(ふじた・でん)1926年生まれ。
ハンバーガーという新しく安価なものを、老舗で高級イメージの三越銀座店にて一号店をオープンしたマクドナルドビジネスの仕掛人である。