成功は九十九パーセントの
失敗に支えられた一パーセントだ


 筆者は本田宗一郎のファンである。宗一郎に関する講演や執筆を多く行ってきた。またホンダの管理者研修や販売店の役員研修も行った。ホンダの研修に行くと決まって筆者は質問責めにあう。ホンダの社員は積極的で挑戦的である。グループワークの発表の時など、先を競って発表の座を奪い合う。この会社には今もなおホンダイズムが息づいている。
 本田宗一郎はよく講演で次のように語っていた。
 「私が大事に思うのは、〝パイオニア精神〟ということであります。過去の積み重ねられた多くのものをもとにして、そのうえに自ら作り出した新しい世界を開いてゆくところに進歩があり、これがパイオニア精神だと思います。
 多くの人々はみな、成功を夢み、望んでおりますが、私は、『成功は九十九パーセントの失敗に支えられた一パーセントだ』と思っています。開拓精神によって、自ら新しい世界に挑み、失敗、反省、勇気という三つの道具を繰り返して使うことによってのみ、最後の成功という結果に達することができると私は信じております」
 日本の企業家たちは本田の語る冒険心や開拓者精神を学び、もっと失敗を積極的に、そこから独創的製品を生み出してきたいものである。


【プロフィール】
本田 宗一郎(ほんだ・そういちろう)1906年生まれ。
ユニークなキャラクターで人気の高い本田は語録の宝庫である。オートバイのマントーレースを六年かけて優勝させ、またF1レースでも優勝にこぎつけた。夢を掲げた日本の自動車業界の技術力の向上をけん引した立役者。