即席めんは国民の伝統的な食生活をタテ糸とし、現代の欲求をヨコ糸に織り込んだものである
生活必需品として愛される理由は、糸の織り込みの正しさと強さにある


「食は文化の原点である。とすれば外国の食生活に慣れ切ってしまえば、その民族の精神をも失うことになる。東洋には麺という伝統がある。私が麺に執着するのは、そのせいでもある」
 「おふくろの味は忘れ難いものであるが、他人が食べて必ずおいしいとは限らない。おふくろの味は母と子の愛と信頼で結ばれた味覚である。まさに、味は通じるもののみに輝くのである」
 ある日、安藤は奥さんが天ぷらを揚げるのを見ていた。高温の油でパリッと揚げられた小麦粉の〝ころも〟は時間が経つと水分を吸って軟らかくなる。このことからヒントを得て、「湯熱乾燥法」という、世界初の即席めん商品化のアイデアを思い立つ。「チキンラーメン」を開発して発売した昭和三十三年のことである。安藤が戦後間もない頃に設立したままになっていたサンシー殖産という会社を、「日清製品」と商号変更し今日に至っている。

安藤の語る工業化のための五条件
①おいしいこと。②保存性があること。③便利であること。④安価であること。⑤安全であること。

安藤の経営理念『日々清らかに、そして豊かに。』


【プロフィール】
安藤 百福(あんどう・ももふく)1910年生まれ。
わが国で初めてのインスタントラーメンを発明した男。昭和三十三年から十五年間に世界の約八十ヵ国で五十一億五千万食を売る。このラーメンの数は地球を十二周もするというから驚く。