自分に対しては損と得とあらば
損の道をゆくこと
他人に対しては喜びの種まきをすること


「損の道をゆけ、というのはわかりにくい。いっそ〝正しい道をゆけ〟としたらどうか」という他人からの問いに対して、「何が正しいとか正しくないとか、人間にわかるものでしょうか。それは神様だけにしかわからない。人は自分がいつでも正しい、と主張するから争いが絶えない。そこを、多少、分が悪くても、相手によろこんでいただけるなら損の道をゆく。これなら神様に相談しなくても、自分でできる解決の道である」と、鈴木は語る。
「物事を解決するとき、一歩前に出たやり方は解決にならない。一歩引いて解決したとき、これが完全な解決になる」。これは譲という日本的な他人に〝譲る〟姿勢である。鈴木はこれを貫き通した。
自分を二の次にしても、あえて損をゆく、ここに成功者の極意がある。
「相手に喜んでもらうことで、徳を積むことこそ、自分の喜びになる」
これが鈴木の人生哲学の基本であった。

『ダスキン悲願』(働きさんが心がける〝徳目〟)
謙遜、賢明、剛健の得を養い 仕事の第一は人間をつくることでありますように
働くことが楽しみであり 利益は喜びの取引から生まれますように
商いを通じて人と仲良くなり 経済をもって世界平和のお役に立ちますように


【プロフィール】
鈴木 清一(すずき・せいいち)1911年生まれ。
ダストコントロール事業中心に、リネンサービス、ミスタードーナツなどフランチャイズチェーンなど今日のダスキンの基盤をつくった。