シケの時こそ
イカリを巻け
奉仕と献身によって
自らの利をなせ


 「シケの時にイカリをおろすのは当たり前のことだ。しかしそれでは商売にならん。シケの時にこそイカリを巻いて出ていくことだ。高く買って安く売ることこそ商いの極意というものだ。奉仕と献身によって自ら利をなす。」と中部は語る。
 普通の漁師ならシケの時には港に船をつなげ、シケがおさまるのを待ってからイカリを巻きあげて出港する。しかし中部はそんな常識的なことに甘んじてはいなかった。人が手をこまねいている時こそ飛躍のチャンスであるとし、「シケのあるうちにイカリを巻いて出港すべきだ」と訴えた。
 海がシケている時は危険が伴う。しかし、シケがおさまってからでは遅い。人が避けている時こそ、チャンスだというわけだ。
 こうして危険を恐れることなく、果敢に仕事へ挑戦してきた中部のフロンティア・スピリットが残る社訓を紹介しておこう。

一、企業とは何よりも人にある。
一、人は創意と進歩に生きる。 
一、業は周知に企画し果敢に実行する。
一、誠実と公正により自ら和をなす。
一、奉仕と献身により自ら利をなす。


【プロフィール】
中部 幾次郎(なかべ・いくじろう)1866年生まれ。
マルハのマークでおなじみの林兼商店からスタートし、マグロなどを満載にし魚市場に運び、豪胆な気質と勇敢さで今日のマルハニチロの礎を作った。