「遊ぶ社員ほど仕事ができる」
昔の料亭の女将は、将来大物になる者をパッとつかんでその男に投資をする
これが、いわゆる〝出世証文〟である。


 井植歳男は、明るく暮らす、楽しくやることに価値をおいていた。それが「遊ぶ社員ほど仕事ができる」という言葉に結びつく。
 「〝遊ぶ〟バイタリティーは、仕事をするバイタリティーにつながる。」このバイタリティーをうまくコントロールすれば〝大型社員〟が誕生するというわけだ。井植は『大型社員待望論』 (文藝春秋)という本を出している。井植は大型社員には思い切って抜擢して将来を期待した。それが〝出世証文〟なるものだ。彼は料亭の女将が将来有望な人物を見出すのを見て、「女将だけしか人物を見抜けないわけはない」と思い“出世証文”実践に移したということだ。
 井植の弟の井植薫元社長は次のように語ったという。「会社は社長が陽気でなけりゃあきまへんわ。陽気だけでは〝お笑い産業〟の吉本興業も社員を採用しまっへんが、その陽気にプラスして、ひらめきでんな。社長の性格が暗い会社はあきまへんな」。つまり陽気とひらめきが大切ということだ。
 三洋電機の〝明るさ〟は、どうやら〝遊び〟に支えられてきたというわけだ。

サンヨーの経営理念
「私たちは世界のひとびとになくてはならない存在でありたい」


【プロフィール】
井植 歳男(いうえ・としお)1902年生まれ。
昭和二十二年義兄の松下幸之助と別れ、自転車専用ランプの製造からスタートする。零細企業のバラック建ての会社は、いつも陽気だったという。